画像処理技術とコンピュータ技術の進歩には、めざましいものがあり、循環器領域においても、CTは、非侵襲的心臓画像診断法として、広く臨床の現場で使用されるようになりました。わずか数秒の心臓全体のスキャンで、冠動脈血管内腔や冠動脈壁が鮮明に見られるようになり、患者さまの負担も軽減され、検査時間も短縮できるようになりました。
2006年より、わずか数秒の心臓全体のスキャンのデータから、冠動脈の狭窄、プラーク(動脈硬化病変)、心機能評価、心筋性状などの情報を患者様に提供しております。
2021年11月から第一CT室に心臓に対応して幅広い検出器をもつ、最新のDual layer&Dual energyのPhilips社製のSpectral CT 7500を導入しました。 被ばく低減のBrilliance256 iCTと合わせて、日常診療における心臓画像診断の精度向上ならびに安全性の向上、さらに地域医療貢献に向け、新たなるチャレンジを開始いたしました。 患者さまの利便性の向上、ならびに主治医の先生方へクオリティーの高い心臓画像診断情報提供ができるよう努めて参ります。
これまでSingle source CTであるPhilips社のBrilliance 64CTとBrilliance iCT256を使用していましたが、Brilliance 64CTの更新に伴い、Dual energy撮影が行えるSpectral CT7500を導入しました。
外観の特長は、ガントリーの内口径が80cmとなり、これまでのBrilliance iCT256と比べ10cmほど広くなりました。寝台幅は47cmと5cm広くなりました。また、寝台の最低地上高も21.5cm低くなり43cmとなり、高齢者や車いすの患者さんにもやさしい構造となりました。
検出器を2層構造化とすることで1つのX線管から同時に2つのエネルギーを取得するDual-layer detector方式のDual energy撮影が可能で、空間的・時間的なずれのない完全に一致した条件で撮像が可能であり、全例でレトロスペクティブなスペクトラルイメージングの取得が可能である点もCT7500の優れた特長です。
Spectral CT7500では、撮影速度が≧300mm/sec と高速化したことで、胸部は1秒、胸腹部では2秒と超高速撮影が可能となりました。その結果、すべての症例ではありませんが、心電図非同期(通常の大動脈撮影)であってもバルサルバ洞や冠動脈でmotion artifact が低減された画像の収集が可能となりました。
AIを活用した心臓専用のモーションフリー画像再構成機能であるPrecise Cardiacが新たに搭載され、AIベースの高度な補正技術により,心臓の拍動によるブレを補正し、画質が大幅に改善されました。ヘリカル撮影とコンベンショナル撮影どちらにも対応し,あらゆるシチュエーションにおいて診断精度の向上が期待されております。
サーバ型ワークステーションIntelliSpace PortalもVer.12とバージョンアップされ、冠動脈の抽出とラベリングが向上し、新手法であるPhoto realistic Volume Rendering (PRVR) も追加され、従来のボリュームレンダリングと比べ、よりリアルな三次元画像が生成される(図3)。また、スペクトラル画像解析のラインナップも強化されている。
各種スペクトラルイメージは、解析に使用している各IntelliSpace Portalのクライアントから、Spectral Based Image(SBI)を使って1~2分でストレスなく短時間でスペクトラルイメージを生成できるようになりました。
各スペクトラルイメージは、Dual layer検出器の特長を生かし空間的、時間的なずれのないROIで計測が可能でとなり、仮想単色X線画像は、40~200keVまで1keVきざみで連続的に画像が生成観察可能である。
IntelliSpace PortalでSpectal Image作成の処理を行うことで、空間的・時間的なずれのないSpectral Imageを使って1~2分で様々のスペクトラル画像生成が可能となりました。
CT7500は、161種類の仮想単色X線画像の取得が可能であり、低エネルギーに変化させることで、少量の造影剤投与でも画像コントラストが向上し、腎機能低下症例における診断に利用できるようになりました。
また、ビームハードニングアーチファクトの影響や金属アーチファクトにより画像情報の信頼性が低下した際は、高エネルギーに変化させることでアーチファクトが低減されるようになりました。
さらに、ヨード密度画像や実効原子番号画像を用いた定量評価により、CT値だけでは判別がつきにくい病変や組織がより明確に診断できるようになってきました。また、心筋細胞外容積分画(extracellular volume fraction:ECV)も、数クリックでの計測が可能でスループットも良好であります。
これまでの石灰化スコアを計測する単純撮影から、尿酸ナトリウム(MSU)の冠動脈への沈着を観察することができます。Conventional Image上でHigh densityを示す石灰化や金属ステントから、スペクトラル解析により尿酸ナトリウムの沈着を物質弁別可能であり、大血管などでも見られことがあります。石灰化スコアの高い高尿酸血症の患者様は、チェックが必要と考えられます。
末期腎不全患者、特に透析患者様に生じる確率が高くCTでは円形で表面平滑な周囲に石灰化を伴う腫瘤を呈し,乾酪様壊死物質が、腫瘤の中心部にあり、塞栓による脳梗塞の発症に関わるとされています。通常のConventional Imageに比べてスペクトラルイメージを用いることによりより明確に内部構造を把握することが可能となります。
CTでもECV解析が可能になり、虚血性心疾患による心不全患者様で、左回旋枝(LCx)領域の貫壁性梗塞と右冠動脈(RCA)領域の心内膜下梗塞を呈していた。
右室の左室付着部にECVの増加とLIEを認めた患者様
定量的造影MRI でガドリニウム造影剤を利用したの検討で、広範なLGEは,突然死の独立予後予測因子されており、LGEの量が左室重量の15%を超えると,突然死のリスクは2倍になることが示されています。ECVの方がLGEよりも心臓突然死の高リスク群の特定に有用であると報告されており、CTでもECV解析が可能となってきました。
心尖部型第一CT検査室 | 第二CT検査室 |
装置:Spectral CT 7500 | 装置:Brilliance 256 Slice Helical CT |
1Fに第一CT室、第二CT室があります。
ACC/AHA 2009 STEMI/PCI Guidelines Focused Updateの報告より、等張性ヨード造影剤と従来の非イオン性造影剤の比較においてIohexol とIoxaglateは、造影剤腎症発症に有意差を認めたため、造影CTにおいても安全性のエビデンスを考慮して上記造影剤を選択することとなりました。
0.1~5%未満で悪心、嘔吐などの軽度の副作用が見られます。また、0.04%未満でこれより重篤な副作用が見られることがあります。
検査を受ける患者様の検査前後の看護ケアーは、専門スタッフが対応させていただきます。不明な点がございましたら遠慮なく声をおかけください。放射線科技術スタッフと協力しながら、対応させていただきます。
患者様に造影剤投与のリスクとメリットを十分にご理解いただいた上で、同意書にご署名をいただければ幸いです。また、ご不明な点やご質問がございましたら、放射線受付で、ご説明させていただきます。
また、インターネットからのご予約の場合は、承諾書のダウンロードが可能です。あらかじめよくお読みになりサインをしてご持参いただきますとさらに早く検査をうけることが可能です。
インターネット予約でご不明な点がございましたら、地域連携・入退院支援室までご連絡ください。
電話番号:06-6676-8257
FAX番号:06-6676-8258
包括的な炎症イメージングマーカーの報告が、Lancet誌で報告されて以来、最近では、冠動脈血管の炎症の新しいバイオマーカー、perivascular fat attenuation index(FAI)が利用されています。Vessel borderより外側で、石灰化などの影響を受けることなく血管周囲脂肪のCT値を測定し、血管周囲のFAI高値は、イベント発生を予測できる炎症バイオマーカーとして報告されており、イベント発生が急上昇するFAIの最適カットオフ値は、-70.1 (HU)とされています。FAIの機序を簡単に説明すると、正常血管は、大きな脂肪滴のため、低いCT値をとります。炎症により発生する、サイトカインにより脂肪蓄積が抑制されると小さい脂肪滴とになりそれとともに、CT値が上昇します。図は、左冠動脈(LAD)Seg#6-7、右冠動脈(RCA)Seg#3に石灰化を伴う50%以上の有意狭窄を認め、右冠動脈でACSを発症した重症虚血の2枝病変の症例である。炎症イメージングで、RCAの方が炎症が強く重症でありました。炎症イメージングは重症症例の階層化やプラークの炎症の治療評価ができる可能性があると考えられます。 Sci Transl Med 2017; 9: eaal2658 European Heart Journal (2020) 41, 748–758
冠動脈炎症イメージング(256Slice iCT画像) |
左前下行枝に虚血の無い非有意狭窄病変を認めます。非石灰化プラークに対し脂質低下療法を行い、LDLコレステロールを50mg/dlにコントロールした。治療前後のCTAで、Plaque Volumetric Analysisで34.5%のプラーク退縮をみとめた。視覚的にも狭窄度の改善とプラーク退縮を認めます(矢印白)。プラーク局所のFAIはー67.4から-72.8に改善し、画像からも黄色い部分が増えており、炎症が抑えられて、脂肪滴が大きくなってきたことが推測されます。
脂質低下療法によるプラーク退縮と炎症イメージングバイオマーカーの変化(256Slice iCT画像) |
一般に、Dual energy CTは、一度のスキャンで異なるエネルギーレベル(kv)のデュアル画像を取得することができ、物質の分離同定を容易にします。
さらに、Dual energyに2層スペクトル検出器(Dual layer)を使うことにより、完全に位置ずれのないデータ取得が可能となり、特に動く心臓の心血管イメージングに適しています。
また、 Dual energy CTによるヨウ素灌流マップは、心筋のヨウ素取り込みの定量化、または虚血および梗塞分析のための心筋組織の定性的評価が可能で、これらの技術により、遅延造影による心筋組織評価(Late iodine enhancement)やECVの定量化についても検証され実用化されてきました。
CTによる心筋組織評価(Late iodine enhancement)やECVの最初のアプローチは、造影剤の初期ボーラスとそれに続く平衡状態を作るため、ゆっくりとした注入を使用した造影前後のプロトコルで行われていました。この方法は、造影前の単純CT画像では心筋と血液の区別が難しく、このアプローチではしばしば位置ずれが発生し、ECVの定量精度が不十分であるため、心筋組織評価(Late iodine enhancement)による定性評価が行われていました。最近では、位置ずれを補正するECV分析方法も心臓CTで用いられていますが(図1、2)、やはり、この位置ずれは、ECV定量精度が不十分でした。そのようなことを考えますと2層スペクトル検出器(Dual layer)は画期的な構造と言えます。これまで、磁気共鳴画像法(MRI)で確立された画像技術ですが、最近の研究では、Dual energy CTが代替アプローチである可能性があることが報告されています。さらに、得られたLate iodine enhancement画像か得られた、ヨウ素マップからのヨウ素濃度のみを使用し単純画像(非造影画像)を生成することで、1度の撮影でECV計測が可能となります。
さて、臨床では、細胞外容量(ECV)画分は、びまん性の心筋線維化および心筋梗塞組織のパラメーターとして使用でき、心筋症のある患者のECV画分を推定することで、治療や予後に利用され始めています。CTによるECV評価は、コストや時間に優れ、閉所恐怖症の患者やペースメーカーなど困難な撮影にも対応でき、MRIの既知の制限を克服しながら、優れた可能性と精度を備えています。
ECV on MRI | ECV on CT | P-value | |
---|---|---|---|
健常人 | 26.34±0.90 | 26.32±0.90 | ns |
HCM患者 | 32.55±0.97 | 32.31±0.97 | <.01 |
DCM | 31.26±0.79 | 31.25±0.79 | <.01 |
アミロイドーシス | 53.40±1.19 | 53.45±1.19 | <.01 |
サルコイドーシス | 38.60±1.19 | 38.45±1.19 | <.01 |
ECV(心内膜下梗塞と貫壁性梗塞の両方の合併)(256Slice iCT画像) |
ECV(肥大型心筋症)(256Slice iCT画像) |
従来、心臓CTは、冠動脈有意狭窄病変の除外診断からはじまり、冠動脈の有意狭窄病変や閉塞病変の検出を行っておりましたが、桜橋渡辺未来医療病院画像診断科のデータベースから、これらの有意病変の検出は全スキャンの約20%程度にすぎないこと。さらに、急性冠症候群の発症の70%は、50%程度の軽度から中等度の狭窄病変から発症することの報告を考慮して、データベースを見ると、有意狭窄病変を合わせた軽度~中等度狭窄病変を持つ患者さまは、全スキャン中、実に約75%の患者さまにのぼることがわかりました。プラークの存在とその経過観察を行うことは、将来の急性冠症候群の発症予防に重要であることを地域医療連携の中で、あらためて認識いたしました。非観血的にプラークの変化を見る上でCTは、有用なモダリティーと考えられ、前述の低被ばくシステムによりさらに身近なものとして日常臨床に生かせるものと考えられます。このたび、CTによる動脈硬化病変への臨床画像戦略として、石灰化プラークと非石灰化プラークについて、実臨床に生かすという観点から新システムを構築いたしました。
石灰化病変については、今日のメタボリックシンドロームの診断とあわせて、石灰化スコアの検査を単体で予約できるインターネットシステムを構築しました。石灰化スコアは、長年のEBCT等でのエビデンスの蓄積があり、なによりも、低被ばくで、造影剤を使わないため、患者さまを選ばない検査です。
非造影CT画像で、CT値が130HU以上のものを冠動脈壁の石灰化といい、それを計測したものを石灰化スコアといいます。石灰化スコアは局所動脈硬化判定というより、むしろ冠動脈全体(心臓全体)の動脈硬化を反映する指標であります。造影剤を使用することなく、わずかの放射線被ばく(内臓脂肪測定時の被ばくと同等)と短時間の検査で、冠動脈リスク患者さまの動脈硬化進展の程度を治療前に評価できる有用な方法です。
組織学的にも石灰化プラークの存在下では、その約4~5倍の非石灰化プラークが存在するとの報告もあり、冠動脈疾患の合併の検出においても、高い感度と特異度を持つ点から、スクリーニングの役割として十分期待されます。さらに、薬物治療において、未治療患者さまの、石灰化ボリュームスコアが年率30~35%以上増加するという報告や、最近の高空間分解能のCT装置による再現性の改善から、十分に動脈硬化治療の指標として無症候性のリスク重積患者さまのフォローアップに使えると考えられます。
石灰化スコアの算出法はAgatston score、Mass score、Volume scoreの3つの方法があります。一般的にリスク評価は、Agatston scoreが用いられ、フォローアップの比較時にはVolume scoreが用いられます。
石灰化の意義は…?ちなみに、透析患者では、年齢と透析期間とが相関するといわれており、古典的な冠動脈リスクファクター(糖尿病・高血圧など)と無関係に石灰化の進行を認める。また、石灰化進行の予測因子としては、副甲状腺ホルモン値、治療法(透析または移植)、ESRとの報告もあるが、見解の統一には、もう少し研究をまつ必要があります。
組織学的検討から、必ずしも、冠動脈狭窄の程度、部位は一致しないが、総動脈硬化量とよい相関があります(下図を参照下さい)。一般的に、調節不能な危険因子は、年齢・性別・人種・家族歴、調整可能なものは、脂質代謝異常・糖代謝異常・血圧・喫煙・体重などがあります。臨床的に、年齢不相応な石灰化所見の影に、危険因子が隠れていることを考えておくことが大切であります。また、リスク重積患者は、リスクの数により石灰化スコアが増加し、心筋梗塞の発症も増加すると報告されています。一方で、石灰化0の患者については、リスクが低いと報告されています。
造影剤を使わない石灰化プラーク |
石灰化ゼロ患者と有意狭窄病変の罹患率 |
“The prevalence of significant coronary stenosis in patients with “Calcium Zero” , adjusted for Age and Sex” 桜橋渡辺病院の調査結果が、台湾で行われましたAsian Society of Cardiovascular Imaging学会で評価されました。ASCI Meeting 2010 March Taipei (Award Certification of Merit) |
また、内臓脂肪の測定については、正確な測定を行うことで、その増減についてデータを提供できます。治療薬剤の中には、内臓脂肪が減少しているにもかかわらず、皮下脂肪の増加により腹囲に変化が見られないこともあり、患者さまの治療指針や生活指導に正確な内臓脂肪測定をお勧めいたします。
ご紹介時に、病院での確定リスク病名や検査データをご送付いただけますと、詳細なデータ解析が可能と考えられます。なお状況により、血液検査を追加させていただく場合もございます。
(2)造影冠動脈CT検査従来より行ってまいりました、冠動脈の狭窄度やプラークの形態評価と、左室機能や心筋の機能的評価は、引き続き行ってまいります。これらの検査に加えて、次の非石灰化プラークに対する解析がはじまります。
非石灰化プラークについての新しい解析では、開発当初より、イスラエルのハイファにあるPhillipsの開発部門と、当院の画像診断科スタッフとの間で密接に連絡をとり実現した経緯で2009年より国内で最初にCardiac Plaque Assessment(Phillips Medical Systems)を導入いたしました。プラークの成分のヒストグラム化とその成分を解析できる機能を持ち、桜橋独自の開発プログラムによりさらに視認性を高め、プラーク進行や退縮、成分変化を臨床現場に提供できるようになりました。
非石灰化プラーク ヒストグラム評価(プラーク進行と退縮) |
プラークの進行(ヒストグラム評価) |
プラークの退縮(ヒストグラム評価) |
非石灰化プラーク 成分割合評価(スタチン治療後の成分変化) |
冠動脈のプラーク(成分分析評価) |
これまで、当院で検査を受けられた患者さまのRawデータ、DICOMデータは全てデジタル保管されており、初回で、非石灰化プラークが検出された患者様の2回目以降の検査には、必要に応じて前回比較がレポーティングされます。
今回の高時間分解能のCT導入により、モーションアーチファクトの少ない画像収集が期待され、より精度よく評価できます。
冠動脈の狭窄病変や血管壁の情報を提供することは、もはや、あたりまえの時代となり、さらに得られた膨大なデータをどのように解析して臨床に生かすかが大切な時代となってきました。SCCTから2009年に出たガイドラインの報告の項目で、データが得られている場合は、心機能解析を行うことが、推奨されており、iCTは、高速回転速度と256スライスでフルヘリカルスキャンを最大80%被ばく低減した撮影が可能で、その時間分解能も最大27msecでありCTの心機能解析が可能で、CRT治療に際して心機能解析(Cardiac Contraction Analysis) は、低左心機能患者を対象とした、Dissynchronyのチェックを行えるソフトウェアとして心臓血管センターの不整脈科で利用されております。
心機能解析(Cardiac Contraction Analysis)現在、Philips社とのWork in progressとして心臓・血管センター画像診断科で開発を行っている、低左心機能患者を対象とした、Dissynchronyのチェックを行えるソフトウェアも本年より稼働中であり、虚血性心筋症・拡張型心筋症・左脚ブロック・心不全の原因精査などの患者さまにもCTのメリットがでてくると考えられます。
正常QRS患者 |
完全左脚ブロック(Contractionの遅れが観察される) |
メタル処理フィルターを使って、CRT、ペースメーカーのリードからでる金属アーチファクトを処理する事で、死角のないCT画像から心機能のフォローアップに利用できる可能性がでてきました。
高時間分解能とBeat to Beat™ Variable Delay AlgorithmとMaxCycle™機能による高心時相分解能によりさらに精度よく心機能が解析されると考えられます。
Left Ventricular Cardiac Contraction Analysis (LVCCA) Case1 |
CRT治療の前後で前壁~側壁にかけての遅れが改善した例 |
Left Ventricular Cardiac Contraction Analysis (LVCCA) Case2 |
CRT治療前後で左室駆出率(EF)が著明に改善した例 |
2011年4月4日、世界にさきがけて桜橋渡辺病院に、Philips社製の被ばく低減技術(iDose4)が導入されました。特長は、従来のCT撮影時の被ばくが最大で80%低減されることと、空間分解能が最大68%改善されることです。この技術を使うことで、従来の画質を維持しながら、極めて少ない被ばく量でCT撮影が可能となり、結果として、患者さまの被ばくが驚くほど少なくなります。世界で最初に当院に導入されたこともあり、各国の病院からも注目されております。被ばく低減技術(iDose4)による症例を下に示します。
この患者様は、68歳男性、2010年10月5日に従来の撮影方法で撮影。過日、胸痛症状が出現したため、2011年4月12日に当院でCT撮影を行った。従来の撮影方法では、被ばく量は、DLP 657.7 mGy・cm(9.2 mSv )であった。今回、iDose4( Level 7 )を使うことでDLP 142.7mGy・cm (2.0 mSv ) となり、従来画像のクオリティーを維持しながら、78.3%の被ばく低減が実現された。 |
この患者様は、84歳 女性、胸痛症状が出現したため、当院でCT撮影を行った。初回の撮影であり、Helical Scanを予定した。体格が小さいため、低被ばくの設定プランを作成した。従来の撮影方法による低被ばく撮影プランでは、被ばく量は、DLP 487.1 mGy・cm(6.8 mSv )であった。今回、iDose4( Level 7 )を使うことにより、DLP 106.3mGy・cm (1.5 mSv ) となり、画像のクオリティーを維持しながら、従来の低被ばく設定プランから、さらに、78.0%の被ばく低減が実現された。特に、iDose4は、7段階と多彩なレベル設定ができるので、小柄な体格の患者様は、積極的に最大の低被ばく設定を行っても、いわゆる、プラスチックイメージといわれる様な画像とならず、きちんと追随して画像が出来上がっていることがわかる(図上段および下段、白矢印は、冠動脈の狭窄部)。 |
この患者様は、45歳男性、アブレーション治療のため、左房・肺静脈・左心耳・左房機能などと合わせて冠動脈の評価を行った。機能検査を含むため、Helical Scanを予定した。従来の撮影方法での計画では、被ばく量は、DLP 846.8 mGy・cm(11.8 mSv )であった。今回、iDose4( Level 6 )を使うことでDLP 299.2mGy・cm (4.2 mSv ) となり、従来画像のクオリティーを維持しながら、64.4%の被ばく低減が実現された。アブレーション後のフォローアップ時などには、Step & Shoot技術とiDose4を組み合わせることにより、さらに、従来の画質を維持したまま、低被ばくの撮影が、可能であると考えられる。 |
撮影から解析・レポーティングと心臓CT画像診断のトータルコーディネートを下記装置を用いて行っております。
桜橋渡辺未来医療病院では、理化学研究所の医用機械知能チームと共同で、冠動脈疾患リスク推定システムの構築を進めております。膨大な当院のCT検査データから、2023年度までモジュールの統合とend-to-end学習による冠動脈疾患リスク推定システムの構築を予定しており、心機能評価システムの構築を行い、桜橋渡辺未来医療病院等において実証実験を進めています。また、マルチモーダル情報を利用した、心疾患総合診断・治療支援システムの構築と社会実装を進めてまいります。
私どもの目標は、低被ばく、時間分解能、時相分解能、空間分解能の技術向上を計るとともに、非観血的心臓CT画像検査を安全に行い、地域の患者さまや主治医の先生方に、満足いただけるクオリティーの高い心臓画像診断を達成することです。
第一CT室は大槻 豊主任を中心とし、第二CT室は堀江 誠主任を中心とした1000件以上の心臓CT解析実績を持つ熟練した技術スタッフが、目標の実現に向け、力を合せて全力で邁進してまいりたいと思っております。今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。
冠動脈疾患リスク推定システムの各モジュールの構築 |
黄色のラインがAIの自動解析結果、血管走行の推定はすでにかなりの細い血管まで推定できるよう学習が進んでいます。