冠動脈検査について

心臓MDCT(マルチディテクタCT)検査について

画像処理技術とコンピュータ技術の進歩には、めざましいものがあり、循環器領域においても、画像診断、特にCTは、非侵襲的心臓画像診断法として、広く臨床の現場で使用されるようになりました。わずか数秒の心臓全体のスキャンで、冠動脈血管内腔や冠動脈壁が鮮明に見られるようになり、患者さまの負担も軽減され、検査時間も短縮できるようになりました。

2006年より当院でも、64スライスCT装置を導入し、これまで、わずか数秒の心臓全体のスキャンのデータから、冠動脈の狭窄、プラーク(動脈硬化病変)の同定、心機能評価、心筋性状などの情報を患者様に提供してまいりました。

2010年6月をもちまして、のべ1万人の心臓CT検査を施行いたしました。安全にこの検査を行えましたことを、患者様ならびに、主治医の先生方、病院関係者の皆様のご協力に厚く御礼申し上げますとともに、皆様のヘルスケアーに心臓画像診断という側面から、お役に立てたことを、心より感謝申しあげます。

さて、このたび、地域医療連携の充実と、よりクオリティーの高い画像診断という観点から、蓄積された豊富なデータと解析実績を生かして、桜橋渡辺病院放射線科・心臓血管センター画像診断科では、第二CT室の増設ならびに、最新のCTを導入し、日常診療における画像診断精度向上ならびに安全性の向上、さらに地域医療貢献に向け、新しいチャレンジを開始いたしました。さらにスピーディでスムーズな心臓CT画像検査診断が可能となり、患者さまの利便性の向上、ならびに主治医の先生方へのクオリティーの高い心臓画像診断情報の提供ができるよう、努力しております。

最新心臓CT検査機器の特長

このたび、Brilliance 256 Slice Helical CT(iCT フィリップス社製)を第二CT室に導入いたしました。このCT装置の大きな特長は、従来の40mm幅のディテクターから80mmに増幅したことにより、1回転で撮影できる範囲が広がったこと、空気で浮かせて管球と検出器が回転することから、世界最速の0.27秒/回転(最高時間分解能27msec)であること、さらに、低被ばく対策は、多列化による1回転分のムダ被ばくを削減できる機能(Eclipse DoseRight Collimator)と、国内初の被ばく低減システムであるiDose Technology導入により、従来の画質を保ったまま、コンベンショナルおよび256スライスヘリカルスキャンのどちらも、最大で80%の被ばく低減を達成できます。これらの最新の技術に、これまでのBeat to Beat™ Variable Delay AlgorithmとMaxCycle™機能との併用で、広範囲をより高速に、きわめて低被ばくで、βブロッカーを使うことなく撮影をする事ができ、さらに高時間分解能の1心拍分の心機能データが、最大80%の低被ばくで収集可能となります。

結果として、心臓機能解析分野の充実とともにこれまでの息止め不良のため画質が不十分であった患者さまの息止め時間の短縮や、64スライスCT使用時、不適正心拍数のためβブロッカーを約17%の患者さまに投与しておりましたが、その必要がなくなります。

第一CT室と第二CT室

第一CT検査室 第二CT検査室
第一CT検査室 第二CT検査室
装置:Brilliance 64 Slice CT 装置:Brilliance 256 Slice Helical CT

1Fに第一CT室、第二CT室があります。

造影CT検査に使用される造影剤

ACC/AHA 2009 STEMI/PCI Guidelines Focused Update報告より、等張性造影剤と従来の非イオン性造影剤の比較においてIohexolとIoxaglateは、造影剤腎症発症に有意差を認めたため、造影CTにおいても安全性のエビデンスを考慮して上記造影剤を選択することとなりました。

造影剤の副作用について

0.1~5%未満で悪心、嘔吐などの軽度の副作用が見られます。また、0.04%未満でこれより重篤な副作用が見られることがあります。

検査を受ける患者様の検査前後の看護ケアーは、これまで当院で、3万人以上の患者様の心臓CT撮影のケアー実績をもつ専門スタッフが対応させていただきます。不明な点がございましたら遠慮なく声をおかけください。放射線科技術スタッフと協力しながら、対応させていただきます。

同意書

患者様に造影剤投与のリスクとメリットを十分にご理解いただいた上で、同意書にご署名をいただければ幸いです。また、ご不明な点やご質問がございましたら、放射線受付で、ご説明させていただきます。

受付には、放射線領域の豊富な知識と、長年、愛媛県の保健所、公立総合病院の技師長として、放射線撮影や放射線機器・放射線被ばく管理の豊富な経験を持つ、味口 博志(みぐちひろし)技師が、このCT立ち上げにあたり、シニアアドバイザーとして着任しました。シニアアドバイザーを中心に放射線科技術スタッフ、医師と協力して、十分に対応、ご説明させていただきます。

桜橋渡辺病院

また、インターネットからのご予約の場合は、承諾書のダウンロードが可能です。あらかじめよくお読みになりサインをしてご持参いただきますとスムーズに検査をうけることが可能です。

インターネット予約でご不明な点がございましたら、地域連携・入退院支援室までご連絡ください。

心臓CT画像解析の充実

従来、心臓CTは、冠動脈有意狭窄病変の除外診断からはじまり、冠動脈の有意狭窄病変や閉塞病変の検出を行っておりましたが、桜橋渡辺病院画像診断科のデータベースから、これらの有意病変の検出は全スキャンの約20%程度にすぎないこと。さらに、急性冠症候群の発症の70%は、50%程度の軽度から中等度の狭窄病変から発症することの報告を考慮して、データベースを見ると、有意狭窄病変を合わせた軽度~中等度狭窄病変を持つ患者さまは、全スキャン中、実に約75%の患者さまにのぼることがわかりました。プラークの存在とその経過観察を行うことは、将来の急性冠症候群の発症予防に重要であることを地域医療連携の中で、あらためて認識いたしました。非観血的にプラークの変化を見る上でCTは、有用なモダリティーと考えられ、前述の低被ばくシステムによりさらに身近なものとして日常臨床に生かせるものと考えられます。このたび、CTによる動脈硬化病変への臨床画像戦略として、石灰化プラークと非石灰化プラークについて、実臨床に生かすという観点から新システムを構築いたしました。

心臓CT画像を動脈硬化診断に生かす時代に対応した選べる2つのCT検査(インターネット予約対応)

(1)非造影冠動脈硬化検査
〜 カルシウムスコア・メタボリックシンドローム検査 〜

石灰化病変については、今日のメタボリックシンドロームの診断とあわせて、石灰化スコアの検査を単体で予約できるインターネットシステムを構築しました。石灰化スコアは、長年のEBCT等でのエビデンスの蓄積があり、なによりも、低被ばくで、造影剤を使わないため、患者さまを選ばない検査です。

非造影CT画像で、CT値が130HU以上のものを冠動脈壁の石灰化といい、それを計測したものを石灰化スコアといいます。石灰化スコアは局所動脈硬化判定というより、むしろ冠動脈全体(心臓全体)の動脈硬化を反映する指標であります。造影剤を使用することなく、わずかの放射線被ばく(内臓脂肪測定時の被ばくと同等)と短時間の検査で、冠動脈リスク患者さまの動脈硬化進展の程度を治療前に評価できる有用な方法です。

組織学的にも石灰化プラークの存在下では、その約4~5倍の非石灰化プラークが存在するとの報告もあり、冠動脈疾患の合併の検出においても、高い感度と特異度を持つ点から、スクリーニングの役割として十分期待されます。さらに、薬物治療において、未治療患者さまの、石灰化ボリュームスコアが年率30~35%以上増加するという報告や、最近の高空間分解能のCT装置による再現性の改善から、十分に動脈硬化治療の指標として無症候性のリスク重積患者さまのフォローアップに使えると考えられます。

石灰化スコアの算出法はAgatston score、Mass score、Volume scoreの3つの方法があります。一般的にリスク評価は、Agatston scoreが用いられ、フォローアップの比較時にはVolume scoreが用いられます。

石灰化の意義は…?
  1. 石灰化は、動脈硬化分類でVbの進行病変である。
  2. 石灰化は、加齢による退行性変化ではなく、血管の動脈硬化の存在自体を反映し、正常血管に、石灰化は認めない。
  3. 一般的に男性が50歳、女性は60歳から次第に石灰化が増加するといわれている。
  4. 糖尿病等の冠動脈リスクファクターの合併により、若年層から増加してくる。
  5. 未治療患者においては、Volume Scoreにおいて30~35%増加する。

ちなみに、透析患者では、年齢と透析期間とが相関するといわれており、古典的な冠動脈リスクファクター(糖尿病・高血圧など)と無関係に石灰化の進行を認める。また、石灰化進行の予測因子としては、副甲状腺ホルモン値、治療法(透析または移植)、ESRとの報告もあるが、見解の統一には、もう少し研究をまつ必要があります。

組織学的検討から、必ずしも、冠動脈狭窄の程度、部位は一致しないが、総動脈硬化量とよい相関があります(下図を参照下さい)。一般的に、調節不能な危険因子は、年齢・性別・人種・家族歴、調整可能なものは、脂質代謝異常・糖代謝異常・血圧・喫煙・体重などがあります。臨床的に、年齢不相応な石灰化所見の影に、危険因子が隠れていることを考えておくことが大切であります。また、リスク重積患者は、リスクの数により石灰化スコアが増加し、心筋梗塞の発症も増加すると報告されています。一方で、石灰化0の患者については、リスクが低いと報告されています。

造影剤を使わない石灰化プラーク
造影剤を使わない石灰化プラーク造影剤を使わない石灰化プラーク
石灰化ゼロ患者と有意狭窄病変の罹患率
石灰化ゼロ患者と有意狭窄病変の罹患率
“The prevalence of significant coronary stenosis in patients with “Calcium Zero” , adjusted for Age and Sex” 桜橋渡辺病院の調査結果が、台湾で行われましたAsian Society of Cardiovascular Imaging学会で評価されました。ASCI Meeting 2010 March Taipei (Award Certification of Merit)

また、内臓脂肪の測定については、正確な測定を行うことで、その増減についてデータを提供できます。治療薬剤の中には、内臓脂肪が減少しているにもかかわらず、皮下脂肪の増加により腹囲に変化が見られないこともあり、患者さまの治療指針や生活指導に正確な内臓脂肪測定をお勧めいたします。

内臓脂肪測定

ご紹介時に、病院での確定リスク病名や検査データをご送付いただけますと、詳細なデータ解析が可能と考えられます。なお状況により、血液検査を追加させていただく場合もございます。

(2)造影冠動脈CT検査
~ 石灰化スコア・内臓脂肪検査を含む冠動脈造影検査 ~

従来より行ってまいりました、冠動脈の狭窄度やプラークの形態評価と、左室機能や心筋の機能的評価は、引き続き行ってまいります。これらの検査に加えて、次の非石灰化プラークに対する解析がはじまります。

非石灰化プラークについての新しい解析では、開発当初より、イスラエルのハイファにあるPhillipsの開発部門と、当院の画像診断科スタッフとの間で密接に連絡をとり実現した経緯で2009年より国内で最初にCardiac Plaque Assessment(Phillips Medical Systems)を導入いたしました。プラークの成分のヒストグラム化とその成分を解析できる機能を持ち、桜橋独自の開発プログラムによりさらに視認性を高め、プラーク進行や退縮、成分変化を臨床現場に提供できるようになりました。

非石灰化プラーク ヒストグラム評価(プラーク進行と退縮)
プラークの進行(ヒストグラム評価)
プラークの進行(ヒストグラム評価)
プラークの退縮(ヒストグラム評価)
プラークの退縮(ヒストグラム評価)

非石灰化プラーク 成分割合評価(スタチン治療後の成分変化)
冠動脈のプラーク(成分分析評価)
非石灰化プラーク 成分割合評価(スタチン治療後の成分変化)

これまで、当院で検査を受けられた患者さまのRawデータ、DICOMデータは全てデジタル保管されており、初回で、非石灰化プラークが検出された患者様の2回目以降の検査には、必要に応じて前回比較がレポーティングされます。

レポーティング

今回の高時間分解能のCT導入により、モーションアーチファクトの少ない画像収集が期待され、より精度よく評価できます。

世界最速0.27秒/回転の256スライスCTによる、低被ばくフルヘリカルスキャンがもたらす、新しい心機能解析

1回の検査で、冠動脈の狭窄病変や血管壁の情報を提供することは、もはや、あたりまえの時代となり、さらに得られた膨大なデータをどのように解析して臨床に生かすかが大切な時代となってきました。SCCTから2009年に出たガイドラインの報告の項目で、データが得られている場合は、心機能解析を行うことが、推奨されており、逆に、冠動脈だけの評価を行うならば、低被ばくの1回転で撮影する方法を選択すべきでありますが、低心拍にしか適応できないのが現状であります。今回導入したCTは、高速回転速度と256スライスでフルヘリカルスキャンを最大80%被ばく低減した撮影が可能で、その時間分解能も最大27msecでありCTの心機能解析に新しい光をもたらすと考えられます。現在、256列よりも多列化されたCTもありますが、機能データを収集するためのヘリカルスキャンは128スライスまででありましたが、今回導入のCTは、事実上、256スライスフルヘリカルスキャンが可能で、この点においても、世界初のCT装置と考えられます。これらを用いて新しいチャレンジを開始いたしました。

心機能解析(Cardiac Contraction Analysis)

現在、Philips社とのWork in progressとして心臓・血管センター画像診断科で開発を行っている、低左心機能患者を対象とした、Dissynchronyのチェックを行えるソフトウェアも本年より稼働中であり、虚血性心筋症・拡張型心筋症・左脚ブロック・心不全の原因精査などの患者さまにもCTのメリットがでてくると考えられます。

正常QRS患者
正常QRS患者
完全左脚ブロック(Contractionの遅れが観察される)
完全左脚ブロック

メタル処理フィルターを使って、CRT、ペースメーカーのリードからでる金属アーチファクトを処理する事で、死角のないCT画像から心機能のフォローアップに利用できる可能性がでてきました。

高時間分解能とBeat to Beat™ Variable Delay AlgorithmとMaxCycle™機能による高心時相分解能によりさらに精度よく心機能が解析されると考えられます。

Left Ventricular Cardiac Contraction Analysis (LVCCA) Case1
CRT治療の前後で前壁~側壁にかけての遅れが改善
CRT治療の前後で前壁~側壁にかけての遅れが改善した例
Left Ventricular Cardiac Contraction Analysis (LVCCA) Case2
CRT治療前後で左室駆出率(EF)が著明に改善した例
CRT治療前後で左室駆出率(EF)が著明に改善した例

被ばく低減技術iDose4を世界ではじめて導入しました。

2011年4月4日、世界にさきがけて桜橋渡辺病院に、Philips社製の被ばく低減技術(iDose4)が導入されました。特長は、従来のCT撮影時の被ばくが最大で80%低減されることと、空間分解能が最大68%改善されることです。この技術を使うことで、従来の画質を維持しながら、極めて少ない被ばく量でCT撮影が可能となり、結果として、患者さまの被ばくが驚くほど少なくなります。世界で最初に当院に導入されたこともあり、各国の病院からも注目されております。被ばく低減技術(iDose4)による症例を下に示します。

iDose4イメージ
この患者様は、68歳男性、2010年10月5日に従来の撮影方法で撮影。過日、胸痛症状が出現したため、2011年4月12日に当院でCT撮影を行った。従来の撮影方法では、被ばく量は、DLP 657.7 mGy・cm(9.2 mSv )であった。今回、iDose4( Level 7 )を使うことでDLP 142.7mGy・cm (2.0 mSv ) となり、従来画像のクオリティーを維持しながら、78.3%の被ばく低減が実現された。
iDose4イメージ
この患者様は、84歳 女性、胸痛症状が出現したため、当院でCT撮影を行った。初回の撮影であり、Helical Scanを予定した。体格が小さいため、低被ばくの設定プランを作成した。従来の撮影方法による低被ばく撮影プランでは、被ばく量は、DLP 487.1 mGy・cm(6.8 mSv )であった。今回、iDose4( Level 7 )を使うことにより、DLP 106.3mGy・cm (1.5 mSv ) となり、画像のクオリティーを維持しながら、従来の低被ばく設定プランから、さらに、78.0%の被ばく低減が実現された。特に、iDose4は、7段階と多彩なレベル設定ができるので、小柄な体格の患者様は、積極的に最大の低被ばく設定を行っても、いわゆる、プラスチックイメージといわれる様な画像とならず、きちんと追随して画像が出来上がっていることがわかる(図上段および下段、白矢印は、冠動脈の狭窄部)。
iDose4イメージ
この患者様は、45歳男性、アブレーション治療のため、左房・肺静脈・左心耳・左房機能などと合わせて冠動脈の評価を行った。機能検査を含むため、Helical Scanを予定した。従来の撮影方法での計画では、被ばく量は、DLP 846.8 mGy・cm(11.8 mSv )であった。今回、iDose4( Level 6 )を使うことでDLP 299.2mGy・cm (4.2 mSv ) となり、従来画像のクオリティーを維持しながら、64.4%の被ばく低減が実現された。アブレーション後のフォローアップ時などには、Step & Shoot技術とiDose4を組み合わせることにより、さらに、従来の画質を維持したまま、低被ばくの撮影が、可能であると考えられる。

解析ワークステーション・レポーティング

撮影から解析・レポーティングと心臓CT画像診断のトータルコーディネートを下記装置を用いて行っております。

最後に

私どもの目標は、低被ばく、時間分解能、時相分解能、空間分解能の技術向上を計るとともに、非観血的心臓CT画像検査を安全に行い、地域の患者さまや主治医の先生方に、満足いただけるクオリティーの高い心臓画像診断を達成することです。

第一CT室は大槻 豊主任を中心とし、第二CT室は堀江 誠主任を中心とした1000件以上の心臓CT解析実績を持つ熟練した技術スタッフが、目標の実現に向け、力を合せて全力で邁進してまいりたいと思っております。今後ともどうぞ、よろしくお願いいたします。

第一CT検査室 スタッフ 第二CT検査室 スタッフ
第一CT検査室 スタッフ 第二CT検査室 スタッフ
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